前回は、どれだけ貧窮した中でも、半世紀もの時間が経っていても、返報性のルールが適用された例を紹介しました。
今回は、もう一つの実例を紹介しましょう。
2007年ニューオリンズを襲った災害
2007年にワシントン在住の政府役人が、ニュースリポーターのインタビューに応じ、ハリケーン・カトリーナによる被害が際の政府の動きを説明しました。
彼は、陽水機、船、ヘリコプター、技術者、そして人道支援を、いかに迅速かつ巧みにニューオリンズをはじめとした被災地へ派遣したかを述べました。
しかし当時、この災害に対し連邦政府の対応は目も当てられない程ひどかったのです。
ただし、彼がとりわけ厚顔無恥だったわけではありません。
彼はアメリカの政府関係者ではなく、オランダの駐米大使だったのです。
カトリーナに襲われたアメリカ南部湾岸地域へ提供されたオランダの援助の話なのでした。
インタビュー中に彼は言いました。
「私たちにできること、そしてルイジアナ州のみなさんが私たちにしてほしいことは、一から十まですべてやるつもりです。」
オランダとニューオリンズの関係
いったいどうしてそこまで手を貸してくれたのか?
彼は今回の援助の理由も述べていました。
実は、オランダはニューオリンズに助けられたことがあったそうです、それも半世紀以上前に。
1953年、強風によって北海が荒れ、オランダの国土が約1万平方キロメートルが被害に遭いました。
水は防波堤や堤防も飲み込み、何千もの家を押し流し、2000人程が犠牲になりました。
オランダ政府は支援を要請し、ニューオリンズからの援助と技術協力を得ました。
それにより新しい陽水システムが建設され、再び同じ規模の洪水に見舞われても、無事で済んだのでした。
返報性のルールによる弊害
ところで、外国政府の役人がニューオリンズに提供した援助よりも、連邦政府はあまり活躍していなかったようです。
あるいは、連邦政府はニューオリンズに大した恩義を感じていなかったのかもしれません。
あろうことか同年2007年、ニューオリンズでは殺人事件発生率が3割も上昇し、それまでの記録を打ち破って、全米一危険な都市になってしまったそうです。
カトリーナ被害への連邦政府の対応が原因なのか、はっきりとはわかりません。
しかし、私たちが行動によって撒いた種は、例えそれが苦いものであっても、返報性のルールによって必ず戻ってくるのです。
おわりに
返報性のルールはまさに「因果応報」といえますね。
あまり良い意味では使われない因果応報ですが、実は「良いことをすれば返ってくる」という意味も含まれています。
違いがあるとすれば、因果応報はスピリチュアルな側面がありますが、返報性のルールは積み上げられたロジックであることでしょうか。
なにげないアンラッキーなどの一見関係のない報復であっても、過去に犯した自分の悪行が原因なのかもしれませんね。
みなさんはどうでしょうか?
まだ支払っていないツケは残っているでしょうか?
次回は、返報性のルールが社会でどのように作用するかを紹介します。